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日本にはなぜ老舗が多いのか 田中真澄(社会教育家) 世界に様々な風が吹き荒れるいま、商号を変えることなく 長い歴史を重ねる老舗の存在感が高まっています。 企業の平均寿命が30年と言われる中、 老舗はなぜ永続することができるのか。 日本にはなぜ老舗が多いのか。 まず、何をおいても島国日本は先の戦争後の一時期を除いて、 他国の支配を全く受けなかったことが挙げられます。 これらの地理的、歴史的な環境や条件に 恵まれていたことは何よりも幸いなことでした。 2番目の理由は日本人の勤勉性。 つまり、仕事に手を抜かず、一途に打ち込む国民の習性です。 宣教師のフランシスコ・ザビエルは、 慎ましく勤勉な日本人の民族性に驚きました。 「500年後、日本人は世界を代表する民族になるだろう」と賞賛。 その言葉のとおり、日本人の勤勉、 倹約の精神はいまや世界中の人々が認めるところとなりました。 3番目の理由は、 顧客のために誠心誠意尽くすという顧客第一主義です。 この顧客第一主義は日本独自のものと考えてよいでしょう。 西洋の国々の思想的ベースにはキリスト教があり、 その根本は神の愛、隣人愛です。 だとしたら、商いにもそれが反映されて然るべきですが、 残念ながら顧客第一主義、利他主義という概念は彼らにはありません。 むしろ善悪よりも損得を優先する個人主義的な考え方が主なのです。 そして4番目は人材の育成です。 徹底して社員の面倒を見て教育し、 最後には暖簾(のれん)を分けるという発想もまた 西洋にない日本独自のものです。 もう一つ、私は老舗といわれる企業や店舗を 訪れるたびに驚くことがあります。 どこも立派な神棚や仏壇が備えられているのです。 店主や従業員は毎日、神仏に向かって伝統を守り抜くことを誓います。 私はこれを祈願ならぬ「祈誓」と呼んで、自身も日々実践しています。 神仏に手を合わせ、両親の笑顔を思い浮かべると 不思議にスッと心が開いて、誓いが腑に落ちるのです。 先人への感謝を忘れないでいることも、 人や企業が繁栄する大切な要素なのかもしれません。 |
2025.12.03 |
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